「群馬の算額bS6問1」の解法を考えていて、掲示版で『豁術(かつじゅつ)を使うのでは?』という助言を戴き、
『算法求積通考(さんぽうきゅうせきつうこう)』に解法が載っていることを見つけた。
『算法求積通考(さんぽうきゅうせきつうこう)』では、いくつかの問題に分けて順に説明されている。
これを見ると、安島直円(あじまただのぶ)の円理豁術(えんりかつじゅつ)が説明に使われている。
豁術(かつじゅつ)も綴術(てつじゅつ)から進歩して来たものと思うので、本当は建部賢弘(たけべかたひろ)の
綴術(てつじゅつ)から学ぶのが正しいと思う。しかし、話が長くなりすぎるため、安島直円(あじまただのぶ)の
『弧背術解(こはいじゅつのかい)』で円理豁術(えんりかつじゅつ)を学ぶことから始めることにした。
資料に関しては、読み始めてすぐ変更している。細かくは、《あとがき》で述べます。
(逐語訳はできないので、私が理解したメモとして残すものです。)
「弧背術解(こはいじゅつのかい)」
はじめに、円を分割する図が載っています。
弦を左図のように、
5つに截(た)つ。
その1を子(ね)とする。
丑(うし)は、子の2倍。
寅(とら)は、子の3倍。
卯(う)は、子の4倍。
辰(たつ)は、子の5倍。
(絵は、少しずれて見える
ところもありますが、
大目に見て下さい。)
図1
図2のように、
径(直径)を引くと、
直角三角形ができる。
勾股弦(こうこげん)の術
(ピタゴラスの定理、
三平方の定理)により
同様に
図2
ゆえに
ここで、一長,二長,3長,4長,5長を求めるために
松永良弼(まつながよしすけ)の平方綴術(へいほうてつじゅつ)を使って、無限級数に展開している。
(ここでは、仮に、平方綴術は(へいほうてつじゅつ)、知っているとして先に進む。
松永良弼(まつながよしすけ)の平方綴術(へいほうてつじゅつ)は、あとで学ぶことにする。)
(原数)−(一差)−(二差)−(三差)−(四差)−(五差)−(六差) という形で
七差以降も続くが、ここでは七差以降を省略している。
数字の部分を計算すると、次のようになる。
上の式の「大商」に「径」を代入し、「」に「」を代入すると、
一長が次のようにあらわせる。
同様にして、二長,三長,四長,五長も無限級数で表すことができる。
ここで、一長〜五長までを加えて整理する。
なお、一長〜五長は、それぞれ 径 の項があるため、加えると 5×径となる。
この時の5は、最初に『5つに截(た)つ」としたことによる数なので、
このあとで、精度を上げるためにもっと多く截つことも予想して、「截数」と読みかえる。
次に、横の長さ(ここでは、子)を掛けて、面積を求める。
上の式は、截数が5の場合である。面積を表す図は図3となる。
図3
截数を5⇒nと大きくした場合、子は小さくなり、面積を示す図は図4となる。
帯直弧(たいちょくこ)という図形で、面積は帯直弧積(たいちょくこせき)と呼ばれる。
図4
截数を5⇒nと大きくした場合、面積を表す式は、累乗の和の部分が次のように変わる。
⇒
(4乗〜10乗は省略して)
⇒
となる。
自然数の累乗の和については、関孝和の著作と言われる『括要算法(かつようさんぽう)』で
公式化されていておよびとよばれる。
公式としてこれを使用して計算を進める。
まず、それぞれの累乗の和がどのように表せるかをあげておく。
(『括要算法(かつようさんぽう)』や「」についてもあとで学ぶことにする。)
nを截数として代入すると、帯直弧積(たいちょくこせき)は次のようになる。
変形して
子×截数=弦 であるので
弦を截つ数である、截数を大きくするに従って、截たれたそれぞれの幅である、子は小さくなる。弦は変化しない。
帯直弧積(たいちょくこせき)を求める式は、截数をどんどん大きくすると、子はどんどん小さくなり、
子が掛けられている項も小さくなり、無視できる。
子が掛けられている項を無視すると、帯直弧積(たいちょくこせき)を求める式は次のようになる。
さらに、整理して、
これで、帯直弧積(たいちょくこせき)を求める公式ができた。
(なお、この式は『弧背術解』にならったものだが、分子,分母に「径」があり、さらに約分ができることが分かる。)
『弧背術解(こはいじゅつのかい)』は、弧背を求める式をつくることが本来の目的であるため、
さらに続くが、私の目的は帯直弧積(たいちょくこせき)を求める方法を学ぶことであるので、
今回は、ここで中止とする。
『弧背術解(こはいじゅつのかい)』の続きを読むことは、後日再開したい。
《あとがき》
1.資料は、当初、国立国会図書館の近代デジタルライブラリーでインターネットに
公開されている昭和12年に古典数学書院が発行したものを使ったが、
あまりにも写し漏れが多いので、これは見ないことにした。
2.東北大学附属図書館の和算資料データベースから、F003−23の『弧背術解』,
F004−25の『弧背術解』,F004−26の『弧背術解並弧積術解』を合わせて読んだ。
F003−23の『弧背術解』については、写し漏れは気付かなかった。問題無く使えた。
F004−25の『弧背術解』については、ところどころ写し漏れや写し誤りがあった。
F004−26の『弧背術解並弧積術解』については、文字に癖があり、なれないと読みにくい。
写し漏れや写し誤りには気付かなかった。『明治14年6月に他の本と対比した』との書き込みがある。
3.途中で、『弧背術解(こはいじゅつのかい)を読む』というウェブページを見つけ参考にさせて
もらったので、お礼方々ここにあげさせていただきます。
http://www3.synapse.ne.jp/kintaro/content221.htm
原文に即して説明されていて、非常に参考になりました。
4.『和算は、江戸時代に積分を行っていた。』という話は聞いたことが有ったが、
私は、積分は高校で方法を習っただけで、関数の式が与えられれば積分の計算はできるが意味は
良く分かっていないので、江戸時代の積分のイメージが湧かなかった。
『弧背術解』で、『若截数至多之極数則子者至少之極数也』を見て理解できたと感じた。
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