「弧背術解(こはいじゅつのかい)」を読む(1/1)

「群馬の算額bS6問1」の解法を考えていて、掲示版で『豁術(かつじゅつ)を使うのでは?』という助言を戴き、
『算法求積通考(さんぽうきゅうせきつうこう)』に解法が載っていることを見つけた。

『算法求積通考(さんぽうきゅうせきつうこう)』では、いくつかの問題に分けて順に説明されている。
これを見ると、安島直円(あじまただのぶ)の円理豁術(えんりかつじゅつ)が説明に使われている。

豁術(かつじゅつ)も綴術(てつじゅつ)から進歩して来たものと思うので、本当は建部賢弘(たけべかたひろ)の
綴術(てつじゅつ)から学ぶのが正しいと思う。しかし、話が長くなりすぎるため、安島直円(あじまただのぶ)の
『弧背術解(こはいじゅつのかい)』で円理豁術(えんりかつじゅつ)を学ぶことから始めることにした。

資料に関しては、読み始めてすぐ変更している。細かくは、《あとがき》で述べます。

(逐語訳はできないので、私が理解したメモとして残すものです。)



「弧背術解(こはいじゅつのかい)」

 はじめに、円を分割する図が載っています。
     
  
  弦を左図のように、
  5つに截(た)つ。
  その1を子(ね)とする。
  丑(うし)は、子の2倍。
  寅(とら)は、子の3倍。
  卯(う)は、子の4倍。
  辰(たつ)は、子の5倍。
  
  
  (絵は、少しずれて見える
   ところもありますが、
   大目に見て下さい。)
  
  
  
  
                    図1
  
     
  図2のように、
  径(直径)を引くと、
  直角三角形ができる。
  
  勾股弦(こうこげん)の術
  (ピタゴラスの定理、
   三平方の定理)により
    
  同様に
    
    
    
    
  
                    図2
  
  ゆえに
    
  
  ここで、一長,二長,3長,4長,5長を求めるために
  松永良弼(まつながよしすけ)の平方綴術(へいほうてつじゅつ)を使って、無限級数に展開している。
  (ここでは、仮に、平方綴術は(へいほうてつじゅつ)、知っているとして先に進む。
   松永良弼(まつながよしすけ)の平方綴術(へいほうてつじゅつ)は、あとで学ぶことにする。)
  

  
  (原数)−(一差)−(二差)−(三差)−(四差)−(五差)−(六差)  という形で
  七差以降も続くが、ここでは七差以降を省略している。
  数字の部分を計算すると、次のようになる。

  上の式の「大商」に「径」を代入し、「」に「」を代入すると、
  一長が次のようにあらわせる。

  同様にして、二長,三長,四長,五長も無限級数で表すことができる。





  ここで、一長〜五長までを加えて整理する。
  なお、一長〜五長は、それぞれ 径 の項があるため、加えると 5×径となる。
  この時の5は、最初に『5つに截(た)つ」としたことによる数なので、
    このあとで、精度を上げるためにもっと多く截つことも予想して、「截数」と読みかえる。

  
  次に、横の長さ(ここでは、子)を掛けて、面積を求める。

  
  上の式は、截数が5の場合である。面積を表す図は図3となる。
  
             図3
  
  
  截数を5⇒nと大きくした場合、子は小さくなり、面積を示す図は図4となる。
  帯直弧(たいちょくこ)という図形で、面積は帯直弧積(たいちょくこせき)と呼ばれる。
  
             図4
  
  
  截数を5⇒nと大きくした場合、面積を表す式は、累乗の和の部分が次のように変わる。

  ⇒
  (4乗〜10乗は省略して)

  ⇒
  となる。

  自然数の累乗の和については、関孝和の著作と言われる『括要算法(かつようさんぽう)』で
  公式化されていておよびとよばれる。
  公式としてこれを使用して計算を進める。
  まず、それぞれの累乗の和がどのように表せるかをあげておく。
  (『括要算法(かつようさんぽう)』や「」についてもあとで学ぶことにする。)









nを截数として代入すると、帯直弧積(たいちょくこせき)は次のようになる。

変形して

子×截数=弦 であるので

弦を截つ数である、截数を大きくするに従って、截たれたそれぞれの幅である、子は小さくなる。弦は変化しない。

帯直弧積(たいちょくこせき)を求める式は、截数をどんどん大きくすると、子はどんどん小さくなり、
子が掛けられている項も小さくなり、無視できる。

子が掛けられている項を無視すると、帯直弧積(たいちょくこせき)を求める式は次のようになる。

さらに、整理して、

これで、帯直弧積(たいちょくこせき)を求める公式ができた。
(なお、この式は『弧背術解』にならったものだが、分子,分母に「径」があり、さらに約分ができることが分かる。)

『弧背術解(こはいじゅつのかい)』は、弧背を求める式をつくることが本来の目的であるため、
さらに続くが、私の目的は帯直弧積(たいちょくこせき)を求める方法を学ぶことであるので、
今回は、ここで中止とする。

『弧背術解(こはいじゅつのかい)』の続きを読むことは、後日再開したい。



《あとがき》
 1.資料は、当初、国立国会図書館の近代デジタルライブラリーでインターネットに
   公開されている昭和12年に古典数学書院が発行したものを使ったが、
   あまりにも写し漏れが多いので、これは見ないことにした。
 2.東北大学附属図書館の和算資料データベースから、F003−23の『弧背術解』,
   F004−25の『弧背術解』,F004−26の『弧背術解並弧積術解』を合わせて読んだ。
   
   F003−23の『弧背術解』については、写し漏れは気付かなかった。問題無く使えた。
   
   F004−25の『弧背術解』については、ところどころ写し漏れや写し誤りがあった。
   
   F004−26の『弧背術解並弧積術解』については、文字に癖があり、なれないと読みにくい。
   写し漏れや写し誤りには気付かなかった。『明治14年6月に他の本と対比した』との書き込みがある。
   
 3.途中で、『弧背術解(こはいじゅつのかい)を読む』というウェブページを見つけ参考にさせて
   もらったので、お礼方々ここにあげさせていただきます。
      http://www3.synapse.ne.jp/kintaro/content221.htm
   原文に即して説明されていて、非常に参考になりました。
   
 4.『和算は、江戸時代に積分を行っていた。』という話は聞いたことが有ったが、
   私は、積分は高校で方法を習っただけで、関数の式が与えられれば積分の計算はできるが意味は
   良く分かっていないので、江戸時代の積分のイメージが湧かなかった。
   『弧背術解』で、『若截数至多之極数則子者至少之極数也』を見て理解できたと感じた。
   



























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