「解隠題之法(かいいんだいのほう)」の開方第五附得商を読む(1/1)



算木(さんぎ)と算盤(さんばん)のページで、『算法天元指南』を読みながら天元術について

学んだが、方程式を解くときに、どのように「商」を立てるのかが良く分からなかった。

突然、『「商」をいくつに立てる』とあって、その通り操作を進めると確かに「実」の算木が無くなる。

このままでは、答えの確認はできるが、答えがわからない一般の場合は使えない。

「商」の立て方を学ぶには、「解隠題之法(かいいんだいのほう)」が良いと知り、ざっとみてみた。

5つの項目が有ったが、1〜4は『算法天元指南』で学んだ内容に含まれているようだった。

5つ目の「開方第五」には、「得商」付きとあり、目的に合うのでこれを読むことにした。



「解隠題之法(かいいんだいのほう)」

  関流和算家の間で伝えられた算術書で、「解見題の法(かいけんだいのほう)」,「解伏題の法

  (かいふくだいのほう)」と合わせて三部抄(さんぶしょう)呼ばれ、関流の代表的な写本です。

  関孝和の著作と言われているが、自筆のものは見つかっておらず、写本しか有りません。

  それぞれの概略は、次のようなものです。

  「解見題の法(かいけんだいのほう)」 各種の図形の例題がある。方程式を用いなくても
                          直接解答が出せる問題の処理方法を説明している。

  「解隠題之法(かいいんだいのほう)」 数字係数の高次方程式の数値解法を説明している。

  「解伏題の法(かいふくだいのほう)」 高次の連立方程式から終結式を用いて未知数を
                         消去する技法が説明されている。


  「解隠題之法(かいいんだいのほう)」の写本の数は、20以上見つかっているが、

  わずかずつ異なっている。

  それぞれ写した人も時間も手本も違うのだから写し間違いが有るのは仕方無いだろう。

  ここでは、ウェブで公開されている東北大学附属図書館蔵の林文庫2306 の写本を読んだ。


  第1 立元(りゅうげん)

  第2 加減附併

  第3 相乗附見乗

  第4 相消

  第5 開方附得商

  これが構成で、始めにも書いたとおり、「開方附得商」を選んだ。


「開方第五附得商」

  3丁(6ページ)あまりの内容です。



  はじめに、2次の開方式が示され、計算の方法と結果がある。

  ここでは、「立商五」とやはり突然出てくる。

    「開方第五附得商」の二次方程式を解く

  計算結果のところで、「商五」だけでなく,式が載っているのが特徴的。>   

  つぎに、3次の開方式が示され、計算の方法と結果がある。


  ここでも、「立商三」とやはり突然出てくる。

    「開方第五附得商」の三次方程式を解く

  計算結果のところで、「商五」だけでなく,式が載っているのが特徴的。

  

  「得商」

  「商」に1を立てて計算して、「実」が残ればもう一度、「商」に1を立てて計算し、

  これを「実」が無くなるまで繰り返し、「実」が無くなったら、

  それまでの「商」をあわせて方程式の正式な商「定商」としている。

  例が3つ載っている。

  例1は、「商」が整数の場合。

    「得商」の例1


  例2は、「商」が少数1位までの場合。「商」に負数を立てても良いとしている。

    「得商」の例2


  例3は、「商」が少数で続く場合。近似値での打ち切り法も示している。

    「得商」の例3


  
  

 《あとがき》

  1.2次方程式,3次方程式の「商」を求めるまでは、『算法天元指南』とほぼ同じだが、

    「実」の算木が尽きても、一連の算木操作をしっかりやるところが特徴。

    しかし、『算法天元指南』を学んだときに「実」が尽きたとして途中で算木操作を

    打ち切ることに違和感を感じていた。こちらの方が本来の方法と思う。

  
  2.「得商」の例1は、しっかりとした算木操作をすれば、「商」に適当な数を入れて

    計算を繰り返すことで、正式な商「定商」を探りだせることを示している。

  
  3.「得商」の例2は、しっかりとした算木操作をすれば、「商」にマイナスの数を

    立てても良いことを示している。

    また、「商」を少しずつ増やして真の値を超えてしまった時は、「実」の符号が

    変わることで分かることを教えている。

  
  4.「得商」の例3は、「実」が尽きず、「商」が少数で続く場合を示している。

    この場合も、しっかりとした算木操作を行うことは基本。

  
  5.「得商」の例3で、少数第3位,4位を、少数第2位の計算が終わった時の、

    「実」を「法」で割って求めている。

    この近似は、説明も無く突然行われている。意味が分からないので後日再検討する。

































  

「解隠題之法」の開方第五附得商

二次方程式の解法


三次方程式の解法


得商


例1


例2





例3





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