「開方飜変之法(かいほうはんへんのほう)」
関流和算家の間で伝えられた算術書で、七部書と呼ばれる関流の代表的な写本の1つです。
関孝和の著作と言われているが、詳細は不明です。
ここでは、ウェブで公開されている東北大学附属図書館蔵の岡本写0018 の写本を読みます。
ただし、このデータは、赤黒の2色で書かれたものをモノクロで取り込んだものらしいので、
数の正負が分かりにくいため、同じく東北大学附属図書館蔵の岡本写0171 の
「開方翻変五条(かいほうはんへんごじょう」関夫子編術・藤田嘉言解(文化九年)
を合わせて読みます。
第1 開出商数
第2 験商有無
第3 適尽諸級
第4 諸級替数
第5 視商極数
これが構成で、方程式を論じているそうです。
〈以下は、私のメモです。何が書かれていたか書きましたが、訳文ではありません。〉
〈細かい内容については、元のデータを読まれる事をお勧めします。〉
「開出商数第一」
開方式(方程式のこと)は、その商(解のこと)により、4つに分けられる。
(1)全商式・・・商(解のこと)をひとつだけ持つ。(重根も1つと数える。)
(2)変商式・・・すべて正またはすべて負の、数個の商(解のこと)を持つ
(3)交商式・・・正負の商(解のこと)を持つ
(4)無商式・・・商(解のこと)を持たない
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|《「開方翻変五条」の解説を囲いの中に、示します。以降も同様。》
|帰除式(1次式)には1つ、平方式(2次式)には2つ、立方式(3次式)には3つ、
|三乗式(4次式)には4つ、四乗式(5次式)には5つの商(解のこと)がある。
|無商式は、虚数を商(解のこと)として作ったものだ。
|
|商を開出する法は、本商を立てて「実」が尽きるまで求め、この時の残りの
|式を第1の変式という。
|ここに新たに商を立てて「法」が尽きるまで求める。
|この時の新たな商は、本商と変商の差となっている。
|また残りの式は第2の変式という。
|ここでさらに商を立て「廉」が尽きるまで求める。
|こんどの商は、第1の変商と第2の変商の差となっている。
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(注)「法」級のことは、「方」級とも書く。原文は「方」と書かれているが、いままでの
他の部分と合わせて、私は「法」と書きます。同じなので、あしからず。
全商式
平方
例をあげている。原文を右に示す。現代的な数式で表すと次のようになる。
算木を使った計算を示す。
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|正の商1を立てて、「実」が尽きるが、算木操作で「法」級も空算となり、
|変商も正の1である。
|(重根であるが)商は1つなので全商式という。
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立方
例をあげている。原文を右に示す。現代的な数式で表すと次のようになる。
算木を使った計算を示す。
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|負の商1を立てて、「実」が尽きる。
|得られた変式は、無商式なので、商が無い。
|商は1つなので全商式という。
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変式を現代的な数式で表すと次のようになる。
実数の根は無い。
変商式
平方
例をあげている。原文を右に示す。現代的な数式で表すと次のようになる。
算木を使った計算を示す。
(1)先に商に正の1を立てた場合。
本商が1、変商が1+1で2。
(2)先に商に正の2を立てた場合。
本商が2、変商が2−1で1。
立方
例をあげている。原文を右に示す。現代的な数式で表すと次のようになる。
算木を使った計算を示す。
(1)先に商に負の1を立てた場合。
(2)先に商に負の2を立てた場合。
(3)先に商に負の3を立てた場合。
交商式
平方
例をあげている。原文を右に示す。現代的な数式で表すと次のようになる。
算木を使った計算を示す。
(1)先に商に正の2を立てた場合。
本商が2、変商が2−3で−1。
(2)先に商に正の−1を立てた場合。
本商が−1、変商が−1+3で2。
立方
例をあげている。原文を右に示す。現代的な数式で表すと次のようになる。
算木を使った計算を示す。
《後日追記》
無商式
平方
例をあげている。原文を右に示す。現代的な数式で表すと次のようになる。
実数の根が無い。
三乗方
例をあげている。原文を右に示す。現代的な数式で表すと次のようになる。
実数の根が無い。
第2章以降は、後日追記とします。
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